1990年代前半にバブルが崩壊してから、日本経済は景気低迷が続いていま す。最近になってやや持ち直しつつあるとはいえ、一部の企業を除くと業績も 芳しくなく、相変わらず回復感に乏しい状況です。地価下落が継続するなかで、 不動産ビジネスを取り巻く環境も順風とは言いがたく、好調を続けていたマン ション分譲事業にも陰りが見えつつあります。

しかし、こうした環境下にあっても、元気に成長を続けている企業群がいく つかあります。そのひとつが、これから紹介する「不動産投資ビジネス」を展 開する企業です。不動産投資は株式や債券と同様に、不動産を投資対象として とらえ、最終的な投資元本の回収までを見据えて不動産で資金を運用する事業 です。そこでは、投資資金をできるだけ高い利回りで効率的に運用できるよう な工夫がなされており、地価上昇に大きく依存するこれまでの不動産ビジネス のあり方とは異なった特徴をもっています。

不動産投資は、投資をする1社だけで完結するものではありません。投資資 金を幅広い投資家から集め、それを不動産市場で運用します。その過程で不動 産会社はもちろん、金融機関、機関投資家、建設会社、設計会社、不動産調査 会社など、多くのプレイヤーが登場します。関連するプレイヤーは不動産ビジ ネスを本業とする企業に限りません。不動産投資のしくみを利用することによ って、一般企業も自社資産を有効活用し、有利な条件で資産を売却することが 可能になります。個人も不動産投資市場で資金を運用することができます。

このような不動産投資では、その過程で多彩なプレイヤーが登場し、それぞ れのプレイヤーが多様なサービスを提供したり受けたりすることになります。 この投資過程におけるビジネスチャンスは、計り知れないものがあるといえる でしょう。ここでは、これら不動産投資から派生するビジネスを総称して「不 動産投資ビジネス」と呼ぶこととします。

不動産投資ビジネスでは、 多くのプレイヤーが関与し、関連するビジネスも多種多様であるため、その全 容をつかむことがなかなか難しいのも事実です。また、全容を知ろうとすると、 膨大な文献と有識者へのヒアリングに挑戦しなければなりません。そこで、本 書では不動産投資ビジネスを体系化し、そのポイントを抽出して説明すること にしました。

このサイトの特徴は次の3点です。第1の特徴は、不動産投資ビジネスの全体像を描 いているということです。本書の内容は、不動産投資ビジネスの紹介からはじ まって、不動産市場の見方、不動産投資の基礎となるデューデリジェンス、不 動産の投資基準、不動産投資戦略、不動産の証券化と、不動産投資ビジネスの 重要項目をほぼ網羅しています。本来であれば、各分野で1冊ずつの本を出せ るくらいの分量があるのですが、それをポイントのみに絞ることによってコン パクトな形でまとめています。

第2の特徴は、不動産投資に関連する理論と実務の融合を図っているという ことです。不動産投資の分野では、不動産金融工学をはじめとする高度な研究 が色々と進められており、この成果を実務に生かしていくことが大きな課題と なっています。本書ではこの中でも特に実務上必要な項目について、筆者自身 の実務経験などを踏まえ、背景となる理論を紹介しながら実務面でどう利用し ていくかということを説明しています。

第3の特徴は、本書の最大の特徴でもある「わかりやすさ」ということです。 ともすれば専門用語が頻出し、理論も複雑となってしまう不動産投資ビジネス について、初めてこの分野の本を読む方にもわかりやすく説明してあります。 文中のわかりにくい専門用語には、できるだけ簡単な解説をつけ、必要に応じ てふりがなをつけたり、実務的な呼称も紹介したりしました。項目ごとに「ポ イント整理」の欄を設けて、頭の整理や復習に役立つように配慮してあります。

このサイトを入門書として十分に活用したうえで、さらに深い興味を待った方は、 それぞれの分野の専門書を読むことをお勧めします。本書が読者の方々のビジ ネスや不動産投資に、ひいては不動産投資ビジネスの発展に少しでもお役に立 つことができれば幸いです。

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「2003年問題」と「2010年問題」

東京都内で大規模オフィスビルが大量に供給される「2003年問題」が、不動産業界やマスコミを賑わしました。 1990年代半ばころからビルの供給過剰の時代に入ったとはいえ、ビルに新しく入居したいというテナントの需要と、新しく賃貸床として供給されるビルの供給とは、多少の差があるにしても、これまでは一応のバランスを保っていました。 Read more …